
児童買春・児童ポルノ禁止法という法律を聞いたことがある方も多いと思います。
本記事では、どんな行為が禁止され、どんな罰則が設けられているのか、逮捕された場合にどう対処すればよいのか、といった点について弁護士が詳しく解説します。
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この記事の目次
児童買春・児童ポルノ禁止法とは
児童買春・児童ポルノ禁止法の正式な名称は「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」といいます。
児童買春・児童ポルノ禁止法は、1996年(平成8年)に開かれた世界会議で、児童ポルノの8割が日本製と指摘されたことや、日本社会において援助交際が社会問題化してきたことを受け、1998年(平成10年)に議員立法によって成立した法律で、その後の1999年(平成11年)11月1日から施行されています。
児童買春・児童ポルノ禁止法の1条(目的)には、「児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性に鑑み、あわせて児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を規制し、及びこれらの行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利を擁護することを目的とする」と規定されています。
児童買春・児童ポルノ禁止法の「児童買春」、「児童ポルノ」
では、児童買春・児童ポルノ禁止法には「児童買春」、「児童ポルノ」はどう定義されているのかみていきましょう。
児童買春とは
児童買春については、児童買春・児童ポルノ禁止法2条2項に規定されています。
それによると、「児童買春」とは、次の①から③のいずれかに当たる人に対して、対償を供与し、又はその供与の約束をして、児童(18歳未満の者)に対し、性交等をすること、と定義されています。
- ① 児童
- ② 児童に対する性交等の周旋をした者
- ③ 児童の保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護する者)又は児童をその支配下に置いている者
「対償」といえるかどうかは、児童等(①から③に当たる人)が性交等に応じる、あるいは応じさせるための動機付けとなったかどうかという点から判断されます。
この点、現金はもちろん、借金の免除なども「対償」に当たるほか、プレゼントや食事のおごりも「対償」に当たる場合もあります。
「対償」は実際に供与した場合のみならず、供与の約束をしただけでも処罰される可能性があります。
次に、「性交等」とは、性交若しくは性交類似行為、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせる行為、です。
なお、性交類似行為とは、実質的にみて、性交と同視し得る態様における性的な行為をというとされています。
たとえば、児童買春における手淫、口淫行為がこれに当たるでしょう。
また、これら以外にも、性交類似行為をするに至った経緯、行為の態様、加害者と児童との関係性などから「性交と同視し得る態様における性的な行為」と認められる行為は性交類似行為に当たる可能性があります。
児童ポルノとは
児童ポルノについては、児童買春・児童ポルノ禁止法2条3項に規定されています。
それによると、「児童ポルノ」とは、次の①から③の児童の姿態を記録した写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物(スマートフォンなどのフラッシュメモリー、パソコンのハードディスク、BL、DVD、USBメモリー、インターネット上のサーバーなど)と定義されています。
- ① 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
- ② 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
- ③ 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
児童買春・児童ポルノ禁止法で禁止されている行為、罰則、時効
以下では、「児童買春」に関する禁止行為、罰則、時効と児童ポルノに関する禁止行為、罰則、時効についてご紹介してまいります。
児童買春に関する禁止行為、罰則、時効
児童買春に関する禁止行為は、児童買春、児童買春の周旋、児童買春の勧誘です。
児童買春
罰則:5年以下の懲役又は300万円以下の罰金
時効:5年
児童買春の周旋
単なる周旋
罰則:5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又は併科(懲役と罰金の両方を科されること)
時効:5年
業として(反復継続して行う意思の下に、という意味)行った周旋
罰則:7年以下の懲役及び1000万円以下の罰金 ※必ず、懲役、罰金が併科されます。
時効:5年
児童買春の勧誘
単なる勧誘
罰則:5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又は併科
時効:5年
業として行った勧誘
罰則:7年以下の懲役及び1000万円以下の罰金
時効:5年
児童ポルノに関する禁止行為、罰則、時効
児童ポルノに関する禁止行為は、所持、(電磁的記録の)保管、提供、製造、運搬、輸出入、公然陳列です。
所持
単純所持
罰則:1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
時効:3年
提供目的所持
罰則:3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
時効:3年
不特定若しくは多数の者に対する提供・公然陳列目的所持
罰則:5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又は併科
時効:5年
保管
単純保管
罰則:1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
時効:3年
提供目的保管
罰則:3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
時効:3年
不特定若しくは多数の者に対する提供・公然陳列目的保管
罰則:5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又は併科
時効:5年
提供
単純提供
罰則:3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
時効:3年
不特定若しくは多数の者に対する提供
罰則:5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又は併科
時効:5年
製造
提供目的製造
罰則:3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
時効:3年
盗撮による(ひそかな)製造
罰則:3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
時効:3年
不特定若しくは多数の者に対する提供・公然陳列目的製造
罰則:5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又は併科
時効:5年
運搬
提供目的運搬
罰則:3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
時効:3年
不特定若しくは多数の者に対する提供・公然陳列目的運搬
罰則:5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又は併科
時効:5年
輸出入
提供目的輸出入
罰則:3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
時効:3年
不特定若しくは多数の者に対する提供・公然陳列目的輸出入
罰則:5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又は併科
時効:5年
公然陳列
罰則:5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又は併科
時効:5年
児童買春・児童ポルノ禁止法の改正の内容
児童買春・児童ポルノ禁止法は、2014年(平成26年)6月に改正法案が国会を通過し、同年7月15日から、改正法が施行されています。
それからだいぶ間が空きましたが、重要な改正がなされていますので、確認の意味でもう一度ここで主な改正点についてご紹介したいと思います。
自己の好奇心を満たす目的での所持・保管罪の追加
児童ポルノの供給側だけでなく需要側も処罰することで、児童ポルノを根絶しようという趣旨です。
2015年(平成27年)7月15日以降の所持、保管に適用されています。
盗撮による(ひそかな)製造の罪の新設
児童を対象とした盗撮はこの罪で処罰される可能性もありますので注意が必要です。
児童買春・児童ポルノ禁止法違反の判例
【裁判所】:福岡高等裁判所那覇支部
【判決日】:2018年(平成30年)11月14日
【罪名】:児童買春の罪
【結果】:無罪
18歳未満と知りながら16歳の女子高生に金銭を渡して性交等を行ったとして児童買春の罪に問われた60歳の男性に医師に対して無罪が言い渡された判決です。
一審では、男性に対して「罰金50万円」の有罪判決が言い渡されていたものの、男性は「相手から21歳と聞かされていたため、18歳未満であるとは知らなかった」として控訴していたのです。
控訴審では、児童の身長体重の変化を示す証拠(検察に対する証拠開示請求で開示された証拠)などが提出され、児童が必ずしも18歳未満だとは疑えないこと(つまり、外見上は18歳以上に見える、ということ)などが明らかになりました。
また、控訴審の裁判長は、一審で有罪の根拠とされた自白についても、医師が医院の経営や患者への悪影響などのことも考えて虚偽の自白(18歳未満であることを知っていたという供述)をすることはあり得る、と指摘し、医師の自白を信用することはできないと指摘しています。
児童買春・児童ポルノ禁止法で逮捕された場合の対処法
最後に、児童買春、児童ポルノに関する罪に当たる行為をしてしまった場合の対処法について解説します。
弁護士との接見を警察官に要請する
逮捕された場合は、何よりもまず、弁護士との接見を警察官に要請しましょう。
警察官に要請すると「知っている弁護士いる?」、「当番弁護士にする?」などと聴かれます。
知っている弁護士がいる場合は警察官に「●●弁護士をお願いします。」と伝え、いない場合は当番弁護士を要請しましょう。
逮捕された方にとって、弁護士との接見は虚偽の自白をしてしまわないためにも重要な防御手段の一つです。
弁護士を私選にするか国選にするか考える
弁護士と接見したら、私選の弁護士を選ぶのか国選の弁護士を選ぶのか考えましょう。
私選の弁護士は、通常、家族や友人が依頼して接見に来てくれた弁護士に依頼するかどうかを決めることになるかと思います。
他方で、国選の弁護士は勾留決定が出た後に選任され、ご自分で弁護士を選ぶことはできません。
まとめ
児童買春・児童ポルノ禁止法で禁止される行為の罰則は、決して軽いものとはいえません。
発覚すれば逮捕・勾留されることはもちろん、重たい量刑を科される可能性もありますので注意が必要です。
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